ディーラーで見かけた話

すっかり忘れていた車の定期点検に行ってきた。

いつものように車を預けて、店内の大型TVの前のソファで、

持ってきた本を読みつつ、コーヒーを飲んでいたら、

年配の男性が店内に入ってきた。

…足元がおぼつかない。

けど、この人が自分で運転してきたんだろうな。

ほかに誰も入ってこないから。

営業さんは、車検の予約は来週なのに、と不思議そう。

本を読みながら片耳で聞いていると、

どうやら代車が借りられるかどうかを確認にきたらしい。

 

「代車は用意できるんですが、もし万一事故を起こしたり、

傷つけたりしたら、修理は有料になってしまうんですよ」

 

「ああ、保険とかないの」

 

「お客様が保険に入っていればそちらを使うことになります。

失礼ですが、慣れているご自分の車でもかなり傷があるので、

慣れていない車だと…お車は毎日お使いですか?

もしよければ、使うご予定のない日にしてはいかがですか?

ご自宅までお迎えに行きますから」

 

「う~んめんどうだからいいよ、代車で」

 

いや!そこは代車はいいよ、じゃないのか?

その後もしばらく押し問答した結果、

車を使う予定のない日に、ディーラーまで自分で乗ってきて、

帰りは営業さんが送っていくことになった。

…自分の車が傷だらけなのに平気な人に、

ピッカピカの代車、貸したくないよなぁ。

 

田舎だから、車がないと買い物もままならず、

奥さんを病院に連れていくこともできず、

生活が成り立たないのだろう、ということはわかる。

わかるけど、あそこまでよちよちあるきのおじいちゃんが、

運転しているのかと思うと、ちょっと怖いものがある。

事故でも起こさなきゃいいけど。

今は亡き父に、運転をあきらめさせるのに

ものすごく苦労したのをなんだか思い出してしまった。